差別化戦略とは?具体例やポイントとなる4つの手法を解説!
差別化戦略とは、競合他社にない特徴を活かすことで市場において優位な立場を確立する戦略のことで、 アメリカの経済学者であるマイケル・ポーターが提唱しました。
現代においても、差別化戦略は企業戦略の礎となっており、うまく活かすことで価格競争に巻き込まれない「高くても売れるしくみ」を作り出すことができます。その際、ポイントとなるのが、コンセプトの差別化、顧客サービスの差別化、ブランドイメージによる差別化、マーケットの差別化の4つの手法です。
本記事では、差別化戦略に重要な4つの手法や具体例まで詳細に解説します。ぜひ、企業戦略立案の際に、参考にしてください。
この記事の目次
差別化戦略とは
マイケル・ポーターは著作「競争優位の戦略ーいかに高業績を持続させるか」にて市場の独占を図ることを目的に、差別化戦略を含めた3つの軸を提唱しています。
差別化戦略では独自性を生み出すとともに、商品やサービスに価値があると顧客に認知してもらうことが大切です。具体的には機能性や品質、ブランドイメージ、顧客対応といった項目で優位性を高めていきます。
3つの基本戦略 | 目的 |
差別化戦略 | 自社にしかない特徴を持った製品やサービスを展開することで、高価格でも売れる仕組みを作り出す戦略。代表例は高級ブランドメーカー |
コストリーダーシップ戦略 | 徹底した原価低減を実現することで、安くて平均的な商品やサービスを提供しシェアの拡大を狙う戦略。代表例は100円均一ショップ |
集中戦略 | 幅広いユーザーを囲い込めない反面、大企業にも勝る専門性を持たせることが可能 |
差別化戦略が重宝される理由
差別化戦略が重宝される理由は、商品やサービスの価格競争に巻き込まれにくくなるためです。
2020年の消費者庁のデータによると、80%近くの消費者が価格を重視することがわかっています。
つまりインターネットで値段の比較が容易にできるようになった今日では、安いものが売れる傾向にあります。しかし安価な商品やサービスは1つあたりから得られる利益が少ないばかりか、資本の大きな大企業と真っ向から渡り合うこととなり、市場独占は到底難しくなります。
そうした中、差別化戦略によって「このブランドだから」「他では買えないから」といった購入動機を増やしていくことで低価格競争から脱却できる可能性が高まります。
差別化によりブランド化が進めば自然に商品やサービスが売れていく仕組みができ、特に大きな宣伝戦略を実施しなくとも利益を上げることが可能となるでしょう。
参考資料
令和3年版消費者白書
差別化戦略を実現しよう!ポイントとなる4つの手法
マイケル・ポーターの差別化戦略を実現するポイントは「コンセプト」「顧客サービス」「ブランドイメージ」「マーケット」それぞれでの差別化です。すぐに実施できる方法と一緒に詳しく解説していきます。
コンセプトの差別化
差別化戦略でまず着手すべきなのが、コンセプトの差別化です。コンセプトとは基本となる考え方や構想のことで、商品やサービスの特徴に大きく反映されます。
市場でよくある例は低価格や品質の高さを売りとするケースですが、これらは頭打ちとなりやすい施策です。低価格を売りにする場合は、先述の通り価格競争に巻き込まれ利益が減少しやすくなりますし、高品質を目指しても、ある程度進歩した市場であれば競合と大差を開きにくく、ユーザーが求めている品質を超えた時に飽和状態となります。
したがってコンセプトの差別化を図る際には、市場でまだ顕在化していない隠れたニーズを探し出し、それを元に練り直しましょう。例えばカメラの市場ではかつてプロが使うものという意識が強くありましたが、昨今のSNSや電子アルバムの需要拡大を受け、最近のカメラはSNSに直接アップロードできたり、クラウドサービスに接続できたりする機能を搭載するなど、進化を遂げています。
こうしたことからも、潜在しているニーズをいち早く汲み取ることで「高くても売れる」差別化を実現できます。
また、新しい商品の開発やサービス展開を進めるにあたり、コンセプトの検討段階で差別化を成功させられれば、費用と時間の削減にもなるでしょう。
参考記事
価値分化:製品コンセプトのイノベーションを組織化する
コモディティ化と製品の心理的価値
顧客サービスの差別化
差別化戦略では販売スタッフやコールセンター担当者の教育も重要です。
消費者は販売スタッフの優しさやコールセンターの対応の良さも購入の判断材料とし、時にはそうした顧客サービスが商品やサービスに付加価値を与えることもあります。この戦略はテーマパークでよく見られ、清掃スタッフのエンターテイメント性やエリア案内人の非日常感などに活用されています。
顧客サービスの差別化を実施する際には、教育や対応のマニュアルを見直すことがおすすめです。
企業理念の共有機会を増やし理解度を深めたり、自社製品やサービスの特徴、こだわりを再確認する研修を行ったりと多様な方法があります。従業員の成長を促す環境を整え、接客スキルを向上するシステムを検討してみると良いでしょう。
ブランドイメージによる差別化
差別化戦略の3つ目のポイントは、ブランディングともいわれるブランドイメージによる差別化です。
仮に競合と同じような品質でもブランディングの土台があれば、商品やサービスの価値は何倍にも膨れ上がります。高級ブランドのバッグやアクセサリーをはじめ、AppleのiPhoneやMAC、AppleWatchなどもブランディングに成功している例です。
Appleの場合、単に製品やサービスを開発するのではなく、新しいライフスタイルを築き上げるという視点で携わっているため、デザインに統一感があり、ブランドのイメージをより強固なものにしています。
ブランドイメージによる差別化はデザインを揃えるだけでなく、雑誌やCMといったメディアの見直しやHPのキャッチコピーまでアイデンティティを確立する方法はたくさんあります。コンセプトの差別化と併せて検討してみましょう。
マーケットの差別化
4つ目の差別化戦略のポイントにマーケットの差別化が挙げられます。
マーケットの差別化には、特定の市場で群を抜いてシェアを獲得する特化戦略も含まれます。
3つの軸にある集中戦略にも通ずる手法で、自社の製品やサービスに特異な特徴を持たせることで、ニッチな市場において独占状態を作り出します。特定のジャンルのニーズに応えることができれば、確固たる地位を築くことができるでしょう。
また近年では、生産から消費者に届くまでの経路である流通チャネルで特色を持たせる差別化戦略を実施する企業もあります。生産元の可視化や製造過程のSDGsを公開するなど多種多様です。
例えば、化粧品業界ではオムニチャネルの展開が進んでいます。
オムニチャネルはオンライン・オフライン問わず全ての流通経路で顧客との接点を持つ戦略の1つで、今まで店頭販売が主体だった業界が新型コロナウィルス感染拡大の打撃を受けて急速に進めた施策でもあります。店頭での商品販売に限界を迎えた化粧品会社はオンラインでの販売も実施することで新たな販売ルートを開設、さらにポイントシステムや決済方法を統一することで顧客がオンラインとオフラインを気軽に行き来できる仕組みを作りました。
こうした差別化戦略によって売り上げの安定化を図ることが可能です。
参考になる差別化戦略の具体例
ここまで「コンセプト」「顧客サービス」「ブランドイメージ」「マーケット」それぞれの差別化について解説してきました。ここからは、スターバックスやZOZOTOWNなど有名企業の差別化戦略の具体例を紹介します。
空間演出によるブランドイメージの確立
空間演出とは店舗内の照明や家具などに着目した差別化の方法で、照明の色温度によって親しみやすさや高級感を演出したり、家具の色でブランドカラーを伝えたりすることができます。こうした空間演出を活用した差別化戦略を実施する有名な企業はスターバックスです。
長い時間居続けられるリラックス空間の演出を得意としていますが、特にスターバックスはサードプレイスとしての差別化戦略が魅力です。家庭や自分の部屋(ファーストプレイス)でも職場や学校(セカンドプレイス)でもなく、自分らしくくつろげるとびきり居心地の良い空間であるサードプレイスを指針にすることで、息抜きや日常を豊かにするカフェとしての役割を大いに活かしています。さらに、運営当初から全エリア禁煙を貫くなど、店舗のコンセプトでブランドイメージを確立しています。
こうした徹底した演出によって、多少価格が高くてもスターバックスを選ぶユーザーは多いでしょう。
参考資料
「おかえり」「ただいま」が聞こえてくる居心地の良い場所。サードプレイスの価値とは
販売する商品をあえて絞る特化戦略
マーケットの差別化でも紹介した特化戦略は市場での立場確立に効果的です。販売する商品をあえてしぼることで成功した企業にファッションECに特化したZOZOTOWNが挙げられます。
ZOZOTOWNは2つの差別化戦略を実施しており、非常に参考になる事例です。1つ目は当時主流だった楽天やAmazonなどの総合ECサイトと対照的にあくまでファッションに特化して展開した点、2つ目は徹底的にユーザビリティを追求し変化を組み込んでいる点です。
前者はいわずもがなマーケットの差別化を、後者は顧客サービスの差別化をしているといえます。クーポンやメールのパーソナライズ化や、古い服を下取りし新しい服を購入してもらう心理戦略など、顧客サービスのマーケティング力が伺えます。これもファッションに特化したからこそスピード感を持って行うことができているのでしょう。
参考資料
ゾゾタウン(ZOZOTOWN)の経営戦略から学ぶ差別化・マーケティング戦略の考え方
ZOZOTOWNのマーケティングが、心理学や行動経済学からことごとく合理的で、「さすが!」と唸った件
WEBコンテンツを用いた差別化戦略
最後の具体例はWEBコンテンツを利用した差別化戦略です。先に挙げた空間演出や特化戦略は導入に伴う変革が大きくなりがちですが、WEBコンテンツを用いた差別化戦略であれば現在の設備を大々的に変える必要なく、インターネット上で実施できます。
今やインターネットを介したサービスの展開や商品の販売が当たり前になっており、対策をしないのはもってのほか、WEBコンテンツの質が企業活動の進退に影響を与えることもおおいにあり得るでしょう。
具体的にはHPデザイン、オウンドメディアやブログなどの記事、メールマガジン、プレリリース情報といった要素で競合と差別化を図ります。インターネット上でより多くのユーザーに閲覧されるためにはSEOを意識した制作を心がけるか、そうした知識に強い企業に依頼することがおすすめです。
差別化戦略の成功を確実にするために
差別化戦略を成功に導くためには事前の調査分析が重要で、それには主に3つ「顧客ニーズ」「自社の強みや弱み」「競合他社の強みと弱み」の把握が必要です。それぞれの調査分析をした上で、自社の強みを活かすのか、新しい強みを開発するのか、既存と異なった見方で消費者にアプローチをするのかなどを突き詰めていきます。
もちろん、差別化戦略を実施した後には売り上げや生産性の変化から企業計画を適宜調整することが大切です。
まとめ
この記事のポイントを整理すると以下の通りです。
差別化戦略とは競合にはない特徴を持つことで市場の独占を狙う戦略のこと
商品やサービスの価格競争に巻き込まれにくくなるメリットがある
一括に差別化戦略といっても、コンセプトの差別化、顧客サービスの差別化、ブランドイメージの差別化、マーケットの差別化と多様な種類がある
現在の製品やブランドイメージに課題感を持つ場合、まずはWEBコンテンツの制作から始めましょう。HPや記事の質が変わるだけでも競合との差異を印象づけることが可能です。
株式会社ヒトノテでは、本記事でご紹介したコンテンツマーケティングを行っております。課題を解決するためのKW選定、コンテンツ制作、納品まで一気通貫でご支援しておりますので、ご相談事項ございましたら、お問合わせください。
執筆者:矢田茉里衣
株式会社ヒトノテのコンテンツディレクター。クライアントの要望に柔軟に対応できるよう、ヒアリングに重きを置いています。
監修者:坪昌史
株式会社ヒトノテの代表取締役CEO。 エンジニアとしてキャリアスタートし、サイバーエージェントのSEO分析研究機関を経て、リクルートの横断マーケティング組織のマネージャー&全社SEO技術責任者を務める。その後、独立しSEOを中心としたクライアントの課題解決を行う。2017年、株式会社ヒトノテを創業し、様々な企業のウェブマーケティングの支援を行う。
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