ユーザビリティとは?向上させるための方法も解説!
ユーザビリティは、近年のWEBマーケティングで重要視されている概念の1つです。
「サイトの使いやすさ」と訳されますが、その中には様々な要素が含まれており、不十分な知識でユーザビリティ改善に取り組んでも十分な成果は得られません。
この記事では「ユーザビリティを良くしたい」という方を対象に、そもそもユーザビリティとは何か、といった基本的なことから、どのように改善できるのか、その具体的手法までを解説していきます。
そもそも、WEBマーケティングについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
この記事の目次
ユーザビリティとは
ユーザビリティ(Usability)とは、英語のUse(使う)と Ability(○○できる)からなる単語で、使いやすさのことを指します。
しかし一言で「使いやすさ」と言っても、具体的にどのようなサイトが使いやすいのか、ということを理解しておかなければ、ユーザビリティを向上させることはできません。
まずは、ユーザビリティがどのように定義され、どのような項目から評価できるのかを見ていきましょう。
ISO 9241の定義
ユーザビリティはISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)によって国際規格として以下のように定義されています(ISO 9241)。
usability extent to which a system, product or service can be used by specified users to achieve specified goals with effectiveness, efficiency and satisfaction in a specified context of use |
この定義を日本語で表すと以下のような意味になります。
「システムや製品またはサービスにおいて、特定の使用条件下で特定のユーザーが目的を達成する際に、いかに有効か、効率的か、満足度を得られるかを表す度合」
ここから、ユーザビリティを評価するにあたって「有効性」「効率性」「満足度」という3つの視点があることが分かります。
さらに有効性・効率性・満足度は、ISO 9241において以下のように定義されます。
有効性
accuracy and completeness with which users achieve specified goals |
日本語訳:
「ユーザーが特定の目標を達成するための正確性や完全性」
つまり、ユーザーが制作者の意図する通りに正確かつ完全に目的を達成できるかということを表します。WEBマーケティングでは目的(goals)とはコンバージョンだと言えるでしょう。
効率性
resources used in relation to the results achieved Note 1 to entry: Typical resources include time, human effort, costs and materials. |
日本語訳:
「達成された結果に関連して使用されるリソース(時間、労力、費用、および材料)」
時間や労力などのコストをかけることなく、目標を達成できたかどうかという視点のことです。WEBサイトが分かりづらく、目的のものを探すのに時間や労力が掛かるようでは、ユーザビリティが高いサイトとは言えません。
満足度
extent to which the user’s physical, cognitive and emotional responses that result from the use of a system, product or service meet the user’s needs and expectations |
日本語訳:
「システム(製品、またはサービス)を使用して得られたユーザーの身体的、認知的、および感情的な反応が、そのユーザーのニーズと期待をどの程度満たしているか」
つまり、得られたものがユーザーの期待通りであったか、ユーザーの求めるものが得られたのか、その度合いを満足度として表現されています。
サイトを閲覧したのに欲しい情報が得られない場合や、サイトの表示速度が遅くストレスを感じる場合、そのサイトの満足度は低いと言えます。
このように、ユーザビリティとは「単に使いやすいかどうか」を表すだけではない、ということが分かります。つまり、ユーザビリティは「対象となるユーザー」や「ユーザーが置かれた状況、求めるもの」などによって、その評価が変わってくるものなのです。
ユーザビリティを構成する5つの要素
前項の通り、ユーザビリティは非常に多角的で、様々な要素を含む形で定義されています。しかし、このままでは「具体的にどういう点を注意するべきなのか」が分かりづらいですよね。
この問題を分かりやすく解説したのが、アメリカの工学博士「ヤコブ・ニールセン(Jakob Nielsen, Ph.D.)」です。ニールセンは無数に考えられるユーザビリティの要素のうち、主要な指標として5つの指標を示しました。
▼ユーザビリティを左右する5つの主要要素
- Learnability(学習のしやすさ)
- Efficiency(効率性)
- Memorability(記憶しやすさ)
- Errors(エラーの頻度やその内容)
- Satisfaction(ユーザー視点の満足度)
彼の著書「Usability Engineering(ユーザビリティエンジニアリング原論)」(1994年)では、5つの指標は以下のように解説されています。
Learnability(学習のしやすさ)
Learnability: The system should be easy to learn so that the user can begin working quickly. |
引用:Jakob Nielsen, Usability Engineering (Morgan Kaufmann, 1994), p.26
システムは、ユーザーが素早く作業を始められるように、簡単に学習できるものであるべきである。
Efficiency(効率性)
Efficiency: The system should be efficient, so that once the user has learned it, high productivity is possible. |
引用:Jakob Nielsen, Usability Engineering (Morgan Kaufmann, 1994), p.26
システムは、一度ユーザーが操作方法を習得すれば、高い生産性を可能にするような効率性を持つべきである。
Memorability(記憶しやすさ)
Memorability: The system should be easy to use and remember, so that the casual user can return to it after not using it for a time and still know how it works. |
引用:Jakob Nielsen, Usability Engineering (Morgan Kaufmann, 1994), p.26
システムは、一時的なユーザーが一定の使わない期間を経た後でもその使い方が分かるくらい、使いやすく覚えやすくあるべきである。
Errors(エラーの頻度やその内容)
Errors: The system should have a low error rate, so users will encounter few errors; those they do encounter should be easy to recover from. Further, catastrophic errors must not occur. |
引用:Jakob Nielsen, Usability Engineering (Morgan Kaufmann, 1994), p.26
システムは、ユーザーがほとんどエラーに出会わないよう、エラー発生率を低く抑えるべきである。ユーザーが出会う数少ないエラーも容易に解決できるものであるべきで、ましてや致命的なエラーを発生させてはならない。
Satisfaction(ユーザー視点の満足度)
Satisfaction: The system should be pleasant to use, so that users are subjectively satisfied when using it; they like it. |
引用:Jakob Nielsen, Usability Engineering (Morgan Kaufmann, 1994), p.26
システムは、ユーザーが使用時に主観的に満足でき、好きになってもらえるように、快適に使用できるべきである。
これらの5つの視点に留意して課題を抽出することで、ユーザビリティの高いWEBサイトへと改善していくことが可能です。
アクセシビリティとの違い
ここまでで、ユーザビリティがどんな意味を持つのか、その内容が分かってきたかと思います。
ユーザビリティと似た言葉で「アクセシビリティ」という言葉も存在します。並べて使用されることが多く、その違いを明確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。
アクセシビリティ(accessibility)とは元々、利用しやすさ・交通の便の良さを指す言葉です。ITの分野においては、以下のように定義されます。
ウェブのアクセシビリティを言い表す言葉がウェブアクセシビリティです。ウェブコンテンツ、より具体的にはウェブページにある情報や機能の利用しやすさを意味します。 |
アクセシビリティ(ウェブアクセシビリティ)とは、
- 利用者
- 利用シーン
- 利用デバイス
を問わずに、等しくウェブページにある情報を得られ、またその機能を利用できることを指します。
サイトのターゲットユーザーのような「特定のユーザー」ではなく、利用する可能性のあるすべてのユーザー(高齢者や障がい者を含めて)に対して配慮したデザインを行うことが、アクセシビリティの最大の特徴です。
対照的に、ユーザビリティの向上とは、ターゲットとするユーザーを特定したうえで、そのユーザーに特化する形でサイトを改善することだと言えるでしょう。
▼ユーザビリティとアクセシビリティの違い
ユーザビリティ | 特定のユーザー(サイトのターゲットユーザー)にとって「いかに利用しやすいか」という観点からの指標 |
アクセシビリティ | ハンディキャップを持つ人を含め、どんなユーザーにとっても「等しく使えるものであるか」という点を重視する指標 |
UI、UXとユーザビリティの関係
ほかにも、ユーザビリティとよく一緒に言及される概念に、「UI」「UX」があります。聞いたことがある方も多いでしょう。
ユーザビリティと「UI」「UX」は密接な関係にあります。ユーザビリティの概念をより良く理解するために、UIとUXにも触れていきましょう。
UI
UIとはユーザインタフェース(User Interface)の頭文字で、システム(製品やサービス)を使用する際のユーザーとシステムの接点のことを指します。
WEBサイトにおいては、ブラウザに表示されるすべてのもの(サイトデザイン、ボタン、リンクなど)がUIであると考えられます。
ユーザビリティは主に、このUIに対しての操作性・使いやすさ・分かりやすさを指す言葉です。
UX
UXとはユーザー・エクスペリエンス(User Experience)の略称で、システム(製品やサービス)を通じて得られる体験のことを指します。
WEBサイトなどのデジタルコンテンツに限らず、実際の経験も含めた統合的な経験を指すことが一般的です。
WEBサイト利用をする上での快適性や満足度を表す「ユーザビリティ」と似ていますが、UXはそれらを包括する考え方であり、ユーザビリティはUXを左右する一要素であると言えます。
WEBサイトの構成要素が「UI」であり、
その使いやすさ・操作性・満足度を表すのが「ユーザビリティ」、
そして、ユーザビリティやその他の要素で構成される統合的体験が「UX」と呼ばれるものです。
ユーザビリティ向上のためのチェックポイントと具体例
ここまで、ユーザビリティの定義や関連する概念との違い・関係性について詳しく見てきました。では、これらは実際のWEBサイト構築やデジタルマーケティングにどのように影響するのでしょうか。
ここからは、ユーザビリティ向上のための具体的なチェックポイントを、実施事例をあげながら解説していきたいと思います。
ユーザビリティを向上させる目的
そもそも、ユーザビリティの改善はマーケティングの中でどのような意味のあるものなのでしょうか?
ユーザビリティ向上において得られる効果としては以下のようなものが挙げられます。
リピーターを作る
サイトが使いやすいことは、ユーザーの定着に好影響を与えます。例えば、広告のようなコストのかかるプロモーション手法に頼らずとも、サイトへのアクセス数を安定化させることができます。
売上を伸ばす
ユーザビリティが優れているということは、ユーザーを特定の目的(つまりコンバージョン)へ容易に導くことができます。また、離脱率を抑えられるので、コンバージョン率の改善にもつながり、さらにSEO効果も上がるなどの副次効果も期待できます。
ブランディングを向上する
前項で、ユーザビリティの要素「満足度」ではユーザーに「好きになってもらう」ことがポイントであると触れました。それはつまり「ファン化」を進めることです。ユーザーへのおもてなしができるサイト作りは、そのままブランディングの向上に繋がると言えます。
ユーザビリティの向上はWEBマーケティングにおいて、多方面の改善をもたらす手段となり得ます。次の項目では、具体的な事例を紹介しながらユーザビリティ向上のためのチェックポイントをご紹介します。
ポイント①統一されたルールがあるか
サイト全体を通じたデザイン・レイアウトの一致や操作ルールの統一は、操作性を高め効率性や学習しやすさ・記憶しやすさにも寄与します。
また社会通念から逸脱した操作方法やレイアウトは避け、初めて利用するユーザーにとっても理解しやすい操作性にすると良いでしょう。
▼対策事例
- 画面遷移でレイアウトが変わらないよう基本フォーマットを揃える
- 企業・サービスロゴは左上にありクリックでトップページに戻る
- テキストリンクは青色下線つきにする
- Z字・F字でのレイアウトを心がける
ポイント②情報量は適切か
ユーザーのニーズに見合う適切な量の情報を提供することに心がけましょう。多すぎる情報はユーザーに「必要のないコンテンツ」を見せることになり、満足度を妨げてしまいます。必要以上の選択肢を提示することもユーザーの意思決定を阻害し、売上効果に悪影響を及ぼしかねません。
それぞれのページに必要十分な量のコンテンツ(情報)を掲載することは、SEOとしても有効な方法です。
▼対策事例
- 情報や要素を詰めこみすぎない
- 選択肢を与えすぎない
- 不要な情報は表示しない
ポイント③現在地は分かりやすいか
ユーザーはWEBサイトで、現在地を見失いがちです。そして、サイト内での迷子は離脱に直結します。
サイト内にナビゲーションやインジケーターを丁寧に配置し、「現在地」を把握しやすくしましょう。その結果、不要な離脱を防ぐことができ、また「目的地」を示すことで、ユーザーをコンバージョンまで誘導しやすくなります。
▼対策事例
- 登録や購入のフローのうち、今どこにいるのか・この先何があるのか分かるようにする
- パンくずリストの設置
- 統一したナビゲーション(グローバルメニュー)の配置
ポイント④ミスを前提にしているか
エラーの発生はユーザーの満足度を損ね、離脱を引き起こす危険性があります。それは、エラーの原因がユーザーの操作ミスであっても同様です。特に、申し込みフォームなどコンバージョンに近い「重要度の高いページ」では、ミスを未然に防ぎ、またミスとその修正方法を分かりやすくする仕組みが不可欠です。
▼対策事例
- 押し間違いを防ぐボタンのサイズ・配置
- エラーメッセージを見えやすく、分かりやすくする
- 郵便番号検索など、入力アシスタント機能を実装する
アクセス解析を用いて定量的にユーザビリティを改善しよう
ここまで、ユーザビリティの特性から具体的なチェックポイントまでを見てきました。では、既存サイトのユーザビリティを改善するには、どのようにすればよいのでしょうか。
被験者を募ってのユーザビリティテストやゼロからユーザビリティを再設計することもできますが、そうした方法では、時間や費用面・被験者の人的コストがかかってしまいます。
コストのかさむテストを実施しなくても、アクセス解析ツールを活用すれば、定量的なデータを元に課題を検出することができます。その中で、以下の数値項目が、ユーザビリティの状況をよく表しています。
CVR
CVR(Conversion Rate/コンバージョンレート)とはWEBサイトを利用するユーザーの内、どのくらいのユーザーが目標(申込み完了や問合せなどの成果地点)に到達したかを表す指標です。
この数値が低い場合、ユーザーが目的にたどり着きにくい(=サイトが使いづらい)可能性があります。ナビゲーションの見直しやフォームの改善などを検討しましょう。
離脱率
サイトに来訪したユーザーのうち、離脱(サイトから離れた)割合を示します。離脱率の高いページは、操作が分かりづらかったり、不要な情報が多すぎたりする可能性があります。
コンテンツの見直しやUIの確認を行いましょう。
CVR改善やアクセス解析の手法については以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
まとめ
ユーザビリティは、WEBサイトの改善を行ううえで避けては通れない概念です。ユーザビリティを効果的に改善することができれば、集客や売上も向上し、WEBマーケティングを成功に導くことが出来ます。
また、サイト改善のためには、多角的な視点からユーザビリティの考え方を理解し、サイト上の課題を発見することが必要です。この記事でユーザビリティについての基本や改善方法をしっかりと学び、自社サイトの改善にぜひ役立ててください。
執筆者:ヒトノート編集部
株式会社ヒトノテのオウンドメディア、WEBマーケティングの学習帳「ヒトノート -Hito note-」の編集部。
監修者:坪昌史
株式会社ヒトノテの代表取締役CEO。 エンジニアとしてキャリアスタートし、サイバーエージェントのSEO分析研究機関を経て、リクルートの横断マーケティング組織のマネージャー&全社SEO技術責任者を務める。その後、独立しSEOを中心としたクライアントの課題解決を行う。2017年、株式会社ヒトノテを創業し、様々な企業のウェブマーケティングの支援を行う。
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