Web制作会社に依頼する前に準備すべきこと|RFP・要件定義のポイント

この記事の目次
なぜ事前準備が重要なのか

Web制作会社に依頼する際、事前準備の質がプロジェクトの成否を大きく左右します。準備不足のまま制作をスタートすると、以下のような問題が発生しがちです。
準備不足で起きる典型的な失敗
- 要件の後出しによるコスト増:制作途中で「やっぱりこの機能も欲しい」と要件が追加されると、追加費用が発生します。最初に要件を網羅していれば避けられたコストです
- 方向性のブレ:目的やターゲットが曖昧なまま進めると、デザインの方向性が定まらず、何度もやり直しが発生します。結果として納期遅延とコスト超過を招きます
- 期待と成果物のギャップ:「思っていたのと違う」という事態は、多くの場合、発注者側の要件伝達が不十分であることが原因です
- 制作会社の比較が困難:統一した条件で提案を依頼しないと、各社の提案内容がバラバラになり、公正な比較ができません
事前準備がもたらすメリット
逆に、しっかりと事前準備を行うことで以下のメリットが得られます。
- 正確な見積もりが得られる:要件が明確であればあるほど、制作会社は正確な見積もりを出せます
- 質の高い提案を引き出せる:課題と目的が明確に伝われば、制作会社はその解決に集中した提案ができます
- スムーズなプロジェクト進行:認識のズレが少なく、手戻りが発生しにくくなります
- 適正価格での発注:複数社の提案を同じ条件で比較でき、適正な費用で発注できます
Web制作の依頼前に準備すべき7つの項目
制作会社に相談する前に、以下の7項目を整理しておきましょう。すべてを完璧に固める必要はありませんが、少なくとも各項目について社内で議論し、方向性を決めておくことが重要です。
1. 目的の明確化
Webサイトを制作・リニューアルする目的を明確にします。目的は1つに絞る必要はありませんが、優先順位をつけることが大切です。
目的の例:
- 問い合わせ数を現在の月20件から月50件に増やしたい
- 採用応募を年間100件獲得したい
- ECサイトの売上を月間500万円にしたい
- ブランドイメージを刷新し、ターゲット層にリーチしたい
- コンテンツマーケティングで月間10万PVを達成したい
目的が「かっこいいサイトを作りたい」のような抽象的なものでは、制作会社も具体的な提案ができません。できるだけ数値目標を設定し、KGI(最終目標)とKPI(中間指標)を整理しておきましょう。
2. ターゲットの定義
サイトの主な利用者(ターゲット)を具体的に定義します。ペルソナを設定するとより効果的です。
定義すべき項目:
- 年齢層、性別、職業
- 課題や悩み(何を解決したくてサイトに訪れるか)
- 情報収集の方法(検索、SNS、広告等)
- 意思決定に影響する要因
- 利用デバイス(PC中心かスマートフォン中心か)
BtoB企業の場合は、決裁者と実際の情報収集担当者が異なることが多いため、それぞれのペルソナを設定することが有効です。
3. 必要な機能の洗い出し
サイトに必要な機能を「必須」「あれば良い」「不要」の3段階で分類します。
よくある機能一覧:
- CMS(コンテンツ管理システム):WordPress等
- 問い合わせフォーム
- ブログ/ニュース機能
- 会員登録・ログイン機能
- EC(カート・決済)機能
- 予約システム
- 多言語対応
- SNS連携
- アクセス解析ツールの設置
- SSL(HTTPS)対応
- 外部システムとの連携(CRM、MA、基幹システム等)
機能を整理する際は、「なぜその機能が必要か」も合わせて記載しておくと、制作会社がより適切な実装方法を提案できます。
4. デザインイメージの共有
デザインの方向性を言葉だけで伝えるのは難しいため、参考サイトを用意するのが効果的です。
準備すべきもの:
- 好みのWebサイトを3〜5サイトピックアップ(どの部分が良いかも具体的に伝える)
- NGなデザインの例(避けたいテイストも共有する)
- ブランドガイドライン(ロゴ、カラーコード、フォント規定等があれば)
- 写真素材やイラスト素材(使用したいものがあれば)
「シンプルで洗練された感じ」のような抽象的な表現だけでなく、参考サイトのURLと「このサイトの○○の部分が良い」という具体的なコメントをセットで伝えましょう。
5. 予算の設定
現実的な予算範囲を設定します。予算を伝えることに抵抗を感じる方もいますが、予算を伝えないと制作会社は最適な提案ができません。
予算設定のポイント:
- 初期制作費用だけでなく、月額の保守運用費用も含めて考える
- サーバー費用、ドメイン費用、SSL証明書の費用も考慮する
- 公開後のコンテンツ制作費用(記事制作、撮影等)も見込んでおく
- 予算に幅を持たせて伝える(例:「100〜150万円の範囲で」)
HP制作費用の相場については、Webサイトリニューアルの費用相場の記事やWordPress制作の費用相場の記事も参考にしてください。
6. スケジュールの希望
公開希望日とその理由を伝えます。期限が決まっている場合は、その背景も共有しましょう。
伝えるべき情報:
- 公開希望日(固定か調整可能か)
- 期限の理由(周年イベント、新サービスローンチ、リブランディング等)
- 社内の承認プロセスにかかる期間
- コンテンツ(テキスト・画像)の準備に必要な期間
一般的なWeb制作の期間は、小規模サイトで1〜2か月、中規模サイトで2〜4か月、大規模サイトで4〜6か月以上が目安です。タイトなスケジュールを要求すると、品質に影響が出る場合や、特急料金が発生する場合があります。
7. 運用体制の確認
公開後にサイトをどのように運用していくかを事前に検討しておきます。運用体制によって、制作時に組み込むべき機能や、保守運用の依頼範囲が変わってきます。
確認すべき項目:
- 社内にWeb担当者がいるか(いる場合はスキルレベルも共有)
- コンテンツの更新頻度(週1回、月数回など)
- 誰がコンテンツを作成するか(社内 or 外注)
- アクセス解析を誰が行うか
- セキュリティ対策やバックアップを誰が管理するか
- 将来的なサイトの拡張予定
RFP(提案依頼書)の書き方
RFP(Request for Proposal:提案依頼書)は、制作会社に提案を依頼する際の公式なドキュメントです。上記の7項目を体系的にまとめたものがRFPになります。
RFPに含めるべき項目
RFPの構成は以下のとおりです。すべての項目を網羅する必要はありませんが、情報が多いほど質の高い提案が得られます。
- 会社概要:事業内容、主力サービス、競合企業、市場でのポジション
- プロジェクトの背景:なぜWebサイトを制作・リニューアルするのか
- 目的とゴール:KGI・KPIを含めた具体的な目標
- ターゲットユーザー:ペルソナ情報
- 現状の課題:既存サイトの問題点(リニューアルの場合)
- サイトの要件:ページ構成案、必要機能、デザインイメージ
- 技術要件:CMS、サーバー環境、システム連携等
- 予算:初期費用と月額費用の範囲
- スケジュール:公開希望日と重要なマイルストーン
- 運用・保守:公開後のサポート要件
- 提案の要件:提案書に含めてほしい内容、提出期限、プレゼンの有無
- 選定基準:評価のポイント(実績、費用、体制、提案内容等)
RFP作成のコツ
- 背景と課題を詳しく書く:「何を作ってほしいか」だけでなく「なぜ作るのか」を伝えることで、制作会社が本質的な提案をしやすくなります
- 数値を入れる:「アクセスを増やしたい」ではなく「月間PVを現在の5,000から20,000に増やしたい」と具体的に書きます
- 制約条件を明示する:予算の上限、使用必須のシステム、社内のセキュリティポリシーなど、制約条件は最初に伝えます
- 柔軟性を持たせる:すべてをガチガチに固めるのではなく、「この部分は制作会社の提案に委ねたい」という余地を残すことで、より創造的な提案が得られます
良い提案を引き出すためのオリエンテーションのコツ
RFPを送付した後、多くの場合オリエンテーション(説明会)を実施します。このオリエンの質が、提案の質に大きく影響します。
オリエンの基本構成
- 会社紹介と事業説明(10分):パンフレットだけでは伝わらない事業の強みや特徴を共有します
- プロジェクトの背景と目的(15分):なぜこのプロジェクトを行うのか、どんな成果を期待しているかを説明します
- RFPの説明(20分):RFPの内容を補足説明し、特に重要なポイントを強調します
- 質疑応答(15分):制作会社からの質問に回答します
効果的なオリエンのポイント
- 決裁者が参加する:最終的な決定権を持つ人物がオリエンに参加することで、制作会社は的確な提案がしやすくなります
- 課題を正直に伝える:「アクセスはあるがCVRが低い」「ブランドイメージが伝わっていない」など、現状の課題を隠さず伝えましょう
- 競合情報を共有する:主要な競合企業とそのWebサイトの情報を共有することで、差別化の方向性が明確になります
- 質問の機会を十分に設ける:制作会社の質問の鋭さは、その会社の理解度を測るバロメーターにもなります
- 全社に同じ情報を提供する:複数社にオリエンを行う場合、同じ資料・同じ情報を提供し、公正な条件で比較できるようにします
オリエン後のフォロー
オリエン後に制作会社から追加の質問が来ることがあります。これらには迅速かつ丁寧に回答しましょう。質問が多い会社は、それだけプロジェクトを深く理解しようとしている証拠でもあります。
制作会社の提案書の見方
提案書を受け取ったら、以下の観点で評価しましょう。費用だけで判断するのではなく、総合的に評価することが成功の秘訣です。
課題の理解度
提案書の冒頭で、自社の課題がどの程度正確に理解されているかを確認します。課題の本質をとらえた提案か、表面的な対応にとどまっているかで、その制作会社の実力が見えてきます。
解決策の具体性
「SEO対策を行います」のような抽象的な記述ではなく、「御社の主要キーワード○○において、現在の30位から10位以内を目指します。具体的には〜」のように、具体的な施策と期待される成果が記載されているかを確認します。
サイト構造とワイヤーフレーム
提案にサイトマップやワイヤーフレームが含まれているかは重要なチェックポイントです。これらが含まれている提案は、制作会社がプロジェクトを深く検討している証拠です。
実績と類似案件
自社と同じ業種や規模の制作実績があるかを確認します。類似案件の経験がある制作会社は、業界特有の課題やユーザー行動を理解しているため、的確な提案が期待できます。
体制とスケジュール
誰がプロジェクトを担当するのか、各フェーズのスケジュールは妥当かを確認します。特にプロジェクトマネージャー(PM)の経験と力量は、プロジェクトの成否を大きく左右します。
費用の内訳
見積もりは総額だけでなく、内訳を詳細に確認しましょう。以下の点に注目します。
- 各工程の費用が明示されているか(ディレクション、デザイン、コーディング、システム開発等)
- 修正回数の上限が設定されているか
- 追加費用が発生する条件が明記されているか
- 保守運用の月額費用とその範囲
保守・運用プラン
公開後のサポート体制は、長期的なサイト運営において非常に重要です。以下を確認します。
- 月額の保守費用と対応範囲
- 障害発生時の対応フロー
- CMS・プラグインのアップデート対応
- セキュリティ対策の内容
- バックアップの頻度と復旧方法
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まとめ
Web制作会社への依頼を成功させるカギは、事前準備の質にあります。本記事で解説したポイントを改めて整理しましょう。
- 7つの準備項目を整理する:目的、ターゲット、必要機能、デザインイメージ、予算、スケジュール、運用体制の7項目を社内で議論し、方向性を固めましょう
- RFPを作成する:準備した情報を体系的にまとめたRFPを作成し、複数の制作会社に提案を依頼しましょう。背景と課題を詳しく書くことがポイントです
- オリエンで情報を正確に伝える:決裁者の参加、課題の正直な共有、十分な質疑応答の時間確保が、良い提案を引き出すコツです
- 提案書を多角的に評価する:費用だけでなく、課題理解度、解決策の具体性、体制、保守運用プランを総合的に評価しましょう
事前準備に時間をかけることは、一見遠回りに思えるかもしれません。しかし、この工程を丁寧に行うことで、制作プロジェクト全体がスムーズに進み、結果的にコスト削減と品質向上の両方を実現できます。まずは自社の目的とゴールの整理から始めてみてください。













