生成AIで記事制作を内製化するには?実際につまずいた5つの場所

生成AIで記事制作を内製化しようとして、「作れるようにはなったが、成果につながっている実感がない」という状態で止まっていないでしょうか。
結論から言えば、AIで速くなるのは「作る」工程だけで、成果を決める工程はほとんど速くなりません。ここを取り違えたまま進めると、記事は増えるのに数字が動かない、という状況に行き着きます。
本記事では、SEO・Webマーケティングの支援を200社超で行ってきた立場から、そして自社でも複数の専門メディアをAI活用で運用してきた実務者として、記事制作の内製化が実際にどこでつまずくのかを整理します。コンテンツSEOの基本的な進め方を前提に、AI時代に固有の落とし穴を扱います。
この記事の目次
生成AIで記事制作は内製化できるのか?
記事制作の内製化は、生成AIを使えば以前より現実的な選択肢になりました。ただし「外注をやめて全部社内で回す」という意味での内製化とは、少し違う形になります。
これまで記事制作を内製化しようとすると、書ける人を採用するか、既存社員に書く時間を確保させるかの二択でした。どちらもコストが重く、多くの企業が外注に落ち着いてきた経緯があります。生成AIはこの前提を変えました。文章を形にする作業そのものは、専門のライターでなくても短時間で終わるようになっています。
一方で、変わっていない部分があります。何について書くかを決める、書かれた内容が事実かどうかを確かめる、公開後に成果を見て直すかどうかを判断する。こうした工程は、依然として人の時間を必要とします。
つまり内製化の実態は「制作を社内に取り戻すこと」ではなく、判断を社内に持つことに近い。筆者はここを最初に読み違えていました。手が足りないから内製化できないのだと思っていたのですが、実際に足りていなかったのは判断の方でした。
なぜ「記事は作れるのに成果が出ない」が起きるのか?
制作スピードと検索評価は、そもそも別の変数です。速く作れるようになっても、それだけでは評価されるページにならない——この当たり前が、実際にやってみると想像以上に効いてきます。
参考になるデータがあります。SE Rankingが20ドメイン×100記事、計2,000本のAI生成記事を新規ドメインで公開して追跡した実験では、公開から1ヶ月の時点では検索結果の上位100位以内に表示されるページが28%ありました。ところが3ヶ月時点でこの割合は3%まで急落しています。さらに16ヶ月以上が経過しても状況はほとんど変わらず、低い可視性のまま推移したと報告されています(参考: SE Ranking「AI Content Experiment」)。
この数字が示しているのは「AIで書いたから落ちた」ではありません。同実験は、人によるレビューと編集を挟むことの重要性を結論として挙げています。落ちたのは、公開したあと何もしなかったページです。
記事制作を内製化した企業がつまずくのは、たいていこの構造です。作る速度が上がると、公開までは一気に進みます。そして公開した時点で、担当者の中では仕事が終わる。しかし検索エンジンから見れば、そこがスタートラインでした。
もう一つ、見落とされやすい点があります。制作が速くなると、企画にかける時間まで一緒に短くなってしまう。何について書くかを決める工程は、本来なら制作より重い判断のはずですが、「すぐ作れるのだから、とりあえず出してみよう」という運用に流れやすい。結果として生まれるのは、誰の課題にも当たっていない記事の山です。速度が上がったこと自体が、判断を省く言い訳になってしまう構図と言えます。
生成AIによる記事制作の内製化は、実際にどこでつまずくのか
ここからは一般論ではなく、筆者が自社で複数の専門メディアを立ち上げ、記事制作のワークフローをAIで組んで運用してきた中で、実際に引っかかった箇所を挙げます。どれも事前に想定していなかった場所でした。
品質のばらつきは、AIの性能ではなく「判断基準が言語化されていないこと」から出る
最初にぶつかったのは、出てくる記事の質が安定しないという問題です。同じ指示を出しているつもりなのに、良いものと物足りないものが混ざる。当初はモデルの性能や指示の書き方の問題だと考えていました。
実際には違いました。原因は、こちらの中にある判断基準が言語化されていなかったことです。「この記事は良い」と感じるとき、何をもって良いと判断しているのか。競合と比べて何が足りていないと引っかかっているのか。ベテランの担当者ほど、この基準を経験として持っていて、言葉にしていません。
自社では、この基準を文書に落とす作業に一番時間をかけました。書き出してみると、トンマナ、避けるべき言い回し、一次情報をどこに入れるか、公開前に何を確認するか——判断のほとんどが暗黙知のままだったと分かります。内製化で本当に必要だったのは、ツールの選定ではなくこの棚卸しでした。
量産できるようになった瞬間に、公開が止まる
これは自分でも意外だった落とし穴です。制作の速度が上がると、短期間でまとまった本数を公開できます。そこで達成感が出て、更新が止まる。
自社で運用している媒体を振り返ると、公開を継続できた媒体と、ある時期に集中して出したあと止まってしまった媒体で、その後の推移がはっきり分かれました。止まった媒体は、記事の中身を変えたわけでもないのに、時間が経つほど静かになっていきます。先ほどのSE Rankingの実験結果と、同じ現象を自社でなぞってしまった格好です。
正直なところ、この点は業界データとして知っていたにもかかわらず、自社では防げませんでした。速く作れることと、作り続けられることは別の能力だという実感があります。
一次情報のない記事は、どれだけ整っていても評価されにくい
AIが生成する文章は、構成も整い、読みやすく、破綻がありません。ただし、その内容は既に公開されている情報の再構成です。
同じテンプレートで大量に作ったページ群が、まとめて評価されないという経験をしました。一件ずつ見れば情報として間違っていないのに、検索エンジンから見れば「他所でも読める内容が並んでいるページの集まり」でしかなかった、ということです。
Googleは、コンテンツを自己評価するための問いとして「コンテンツは、独自の情報、レポート、研究または分析の結果を提示しているものですか」「価値を付加することなく、主に他の人の意見を要約していますか」を挙げています(参考: Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」)。生成AIの初期出力は、この2つ目に当てはまりやすい性質を持っています。
ここを埋めるには、自社でしか出せない材料を入れるしかありません。実測した数値、現場で見た事例、担当者の判断——E-E-A-Tの観点でも、この部分が評価の分かれ目になります。そしてこの材料集めは、AIに任せられない工程です。
ファクトチェックの工数を、最初の見積もりに入れていない
内製化の計画を立てるとき、制作時間の短縮ばかりに目が向きます。実際に運用を始めると、事実確認に想像以上の時間を取られました。
生成AIは、もっともらしい数字や出典を提示することがあります。本記事を書く過程でも、社内に蓄積していた業界データの出典を改めて確認したところ、記載されていたはずの数値が該当記事に存在しないケースが見つかりました。内部メモとして残っていた情報でしたが、そのまま記事に載せていれば誤情報になっていたところです。
数字と固有名詞が出てきたら、必ず一次ソースまで辿って確認する。この工程を最初から作業として組み込んでおかないと、後から品質の問題として噴出します。
仕組みが属人化して、担当者が変われば止まる
最後は運用体制の話です。AIを使った制作フローは、組んだ本人にとっては効率的でも、他の人から見ると何がどう動いているのか分かりにくい構造になりがちです。
指示の出し方、判断基準、例外処理——これらが個人の手元にあるままだと、その人が別の業務に移った瞬間に止まります。外注していた頃は制作会社にノウハウが溜まることが課題でしたが、内製化しても文書化しなければ、溜まる先が社内の一個人に変わるだけ。構造としては同じ問題です。
AIに渡していい工程と、人が持つべき工程はどう分けるか?
判断の線引きはシンプルです。正解が一つに決まる工程は渡せる。何を正解とするかを決める工程は渡せない。この基準で切ると、実務ではおおむね次のように分かれます。
渡せる側から見ていきます。情報の収集と整理、構成案を複数パターン出すこと、下書きの作成、表記ゆれの統一、CMSへの公開作業。このあたりは、判断基準さえ渡しておけば安定して回ります。特に構成案の複数出しは、人がやると1案目に引きずられがちな工程なので、AIに任せたほうが視野が広がるという副次的な効果もありました。
一方、人が持ち続ける必要があるのは次の工程です。
- 何について書くかの決定:事業の状況と検索需要の両方を見て決める工程。片方だけでは判断できない
- 一次情報の提供:実測値、事例、現場の判断。ここが記事の独自性そのものになる
- 事実確認:数字と固有名詞を一次ソースまで辿る。AIの提示をそのまま採用しない
- 公開可否と改善の判断:出していいか、直すか、取り下げるか。責任が伴う判断は渡せない
注意したいのは、この線が固定ではないことです。判断基準を文書化できた領域は、少しずつAI側に移せます。逆に、基準が曖昧なまま渡した工程は、ほぼ確実に品質のばらつきとして返ってきます。
自社の場合、トンマナのチェックや一次ソースの確認手順のように、基準を明文化できたものから順にAI側の工程に組み込んでいきました。裏を返せば、明文化できていないものは渡していません。この線引き自体が、内製化の成熟度を測る物差しになると考えています。
記事制作の内製化は、何から始めるべきか?
着手の順番を間違えると、ツールだけが増えて現場が動かない状態になります。最初にやるべきは、ツール選定ではなく現在の工程の棚卸しです。
具体的には、次の順で進めるのが現実的です。
- 工程を書き出す:企画から公開、その後の改善まで、誰が何をしているかを一覧にする
- 判断がどこにあるか印をつける:作業と判断を分けると、渡せる範囲が見えてくる
- 判断基準を言語化する:良し悪しを決めている根拠を文章にする。ここが最も時間を要する
- 小さく試す:全記事ではなく数本で回し、どこで手戻りが出るかを確認する
- 公開後の運用を先に決めておく:誰がいつ効果を見て、直すかどうかを判断するのかを事前に決める
最初の1ヶ月は、記事の本数を目標にしないほうが安全です。本数は後からいくらでも伸びます。伸ばした後で判断基準が無いことに気づくと、作った分だけ直す作業が発生します。
なお、外注をすべてやめる必要はありません。専門性が高い領域や、発信頻度が低いテーマは外注のほうが合理的なケースもあります(記事制作の外注費用相場も参考にしてください)。内製と外注の比率を決めること自体が、内製化の設計に含まれます。
公開後の改善については、記事リライトの方法とタイミングで扱っています。制作の仕組みより、この改善を回す仕組みのほうが成果に直結する、というのが自社で運用してみての実感です。
よくある質問
Q. AIで作った記事は、Googleからペナルティを受けますか?
A. AIを使うこと自体が違反になるわけではありません。Googleがスパムポリシーで問題としているのは「生成 AI ツールまたはその他の同様のツールを使用して、ユーザーにとっての価値を付加することなく大量のページを生成すること」です(参考: Google検索セントラル「スパムに関するポリシー」)。判断の分かれ目は、AIを使ったかどうかではなく、価値を付加しているかどうかにあります。
Q. 内製化すると、工数はどのくらい減りますか?
A. 制作工程は大きく縮みます。ただし判断と確認の工程は残るため、全体としては「減る」というより配分が変わると捉えたほうが実態に近いです。浮いた時間を改善に回せるかどうかで、成果が分かれます。
Q. どのくらいの体制が必要ですか?
A. 判断できる人が1人いれば着手できます。書き手の頭数より、良し悪しを決められる人がいるかどうかが要点です。その人が判断基準を言語化できると、体制はさらに小さくできます。
Q. 外注をやめて、すべて内製化すべきでしょうか?
A. 専門性と発信頻度で切り分けるのが現実的です。専門知識が必要な領域や、年に数本しか出さないテーマまで内製化する必要はありません。
Q. 内製化した仕組みは、担当者が変わっても維持できますか?
A. 判断基準が文書として残っていれば維持できます。個人の頭の中にある状態だと、異動や退職で止まります。仕組みを作る段階で、文書化を工程に含めておくかどうかで結果が変わります。
まずは、自社の工程のどこに判断があるかを見つけるところから
記事制作の内製化でつまずく場所は、AIの使い方そのものではなく、その手前にありました。何を良しとするかが決まっていない、公開後に誰が判断するのかが決まっていない、そして決めたことが個人の頭の中にしか無い。ツールを変えても、この3つは解決しません。
ヒトノテでは、こうした業務プロセスの整理から、AIを組み込んだワークフローの設計・運用の定着までを一貫して支援しています。自社でも同じことを実践し、うまくいった部分と失敗した部分の両方を持っているのが、支援における強みだと考えています。AI導入支援について詳しく見る
この記事を書いた人
坪 昌史株式会社ヒトノテ 代表取締役
リクルートで全社SEOの技術責任者を務め、クラウドワークスでは事業部長として大規模サイトのグロースを牽引。独立後は200社を超える企業のSEO・Webマーケティングを支援しています。エンジニアとしての実装経験を持ち、現在は生成AIを用いた業務プロセスの設計と自動化に取り組んでいます。自社でも複数の専門メディアをAI活用で運用し、そこで得た知見をAI導入支援に還元しています。













